<aside> 💡 目次
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学習目標 | 優 | ボーダーライン | 不可 |
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問題の複雑度がかなり高い患者において、複数の種類の専門職が関わり、ケアを最適化することができる。 | クネビンフレームワーク等を用い、問題の複雑度がかなり高い患者において、複数の専門職を巻き込んで議 | ||
論し、最適なケアを長期的視点で行い、評価できて | |||
いる。 | 問題の複雑度が高い患者において、複数の専門職を巻き込んで議論し、適切なケアが行えているが、評価は不十分である。 | 問題の複雑度が評価不十分、複数 | |
の専門職での議論不十分といった問 | |||
題がある。 |
近年、治療および予防的ケアの改善により、生命予後が向上しただけでなく、多疾患合併症の有病率や患者の複雑性も増加している。
私たちは皆、臨床上の問題を解決するのが簡単なことではないことを経験的に知っている。しかし、私たちの多くは、人体は機械であり、病気はその部品の故障によるものであるという精神モデル(機械論)を教えられ、それを採用しがちである。このような直線的なモデルは、私たちを臨床医療をより細分化し、それぞれの機能不全に対して行うべき介入を非常に正確かつ精密に表現するように駆り立てる。
専門分化・新しい治療技術などにより、患者の問題と医療システムの複雑さが高まり、機械論で解決できない問題が増加している
以前までは、専門医は病院に勤務し、身体の特定の器官に特化し、ほとんどの問題は生物医学的な用語で説明でき、医学部で身につけた知識と技術を使って、機械論に基づき取り組むことができた。
<aside> 💡 **機械論とは:機械論とは、**人間の身体や疾病を機械的な観点から理解しようするために、大きな問題を小さな問題に分解し、身体の特定の部位や器官を個別の機械として捉え、その機能や相互作用を研究・分析し、合理的な推論によって解決することができるとする考え方である。このアプローチでは、人間の身体は機械のような仕組みで機能し、疾病も機械の故障や不具合として捉えられる。
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多疾患併存状態、心理・社会的な問題から影響を受ける問題、医学的には説明できない症状など、機械論では、うまく解決できない健康問題が多数ある。これは、さらなる未知の要因・原因があるからかもしれないが、単に「問題を解決する」ための従来の方法がもはや適切でなくなっているからかもしれない。
複雑性科学という新しい科学は、このような問題にうまく対処するための新しいメタファーを提供してくれる
複雑性科学は、病気(と健康)は、システム全体のさまざまな構成要素間の複雑で、動的で、ユニークな相互作用から生じるという、別のモデルを提案している。効果的な臨床的意思決定には、予測不可能性を受け入れ、全体システム内の微妙な創発力を基礎とする全体論的アプローチが必要である。複雑性科学は、臨床医と患者の双方を確実性の無益な追求から救い、一般的な科学的ルールを文脈の中で個人に適用する場合には、直感と個人的経験の使用を支持する
一つの要素や変数の変化が予測不能で、その変化が他の要素や変数にも影響を及ぼす場合がある。
要素が変化しやすく、関係が非線形であり、挙動が創発的で小さな変化に敏感であるため、あらゆる複雑システムの詳細な挙動は、基本的に時間の経過とともに予測不可能である。
結局のところ、複雑システムが何をするかを正確に知る唯一の方法は、それを観察することである。
機械的システムでは、境界は固定され、明確に定義される。例えば、何が車の部品で、何が部品でないかを知ることは問題ない。
複雑系は通常、境界があいまいである。メンバーシップは変化する可能性があり、エージェントは同時に複数のシステムのメンバーになりうる。
曖昧な境界は、問題解決を複雑にし、変化に対する予期せぬ行動につながる可能性がある。
「The certainty-agreement diagram(確信-合意ダイアグラム)」は、組織やグループの意思決定プロセスにおける複雑性と不確実性を理解するためのモデル。**横軸に「確実性(certainty)」を、縦軸に「合意(agreement)」**を表す
The certainty-agreement diagramは、その問題がsimple(確信度が高く、合意度が高い)か、混沌(確信度が低く、合意度が低い)か、複雑(どちらか、あるいは両方の中間レベル)かを推定するのに用いることができる。問題を抱える患者において、臨床所見、関連する科学的知識ベース、患者の価値観と優先順位について、一致度と確実性のレベルをマッピングすることができる
直面している問題を、原因と結果の関係の性質によって定義される 5 つの状況に分類する
状況を診断し、状況に応じて適切な方法で行動する必要がある
仕事量、キャパシティ、急性のショック、アクセスと利用、患者の嗜好、および文脈的要因などの構成要素を含み、複数の慢性疾患を有する患者の複雑性を理解し研究するための包括的な枠組みを提供する。この新しい概念モデルは、これらの構成要素の時間経過に伴う個人内の変化(ライフサイクル分析)だけでなく、ある時点における個人間の違いを理解するためにも使用できる。また、このモデルには、構成要素間のつながりを変化させるフィードバックループ(両頭の矢印で表される)も含まれている。
各要素の説明